ボールペン、鉛筆、サインペン、そして万年筆と、筆記具にはいろいろな種類がありますよね。
それぞれ特徴があって一長一短ですが、その中でもボールペンと万年筆は比べられることが多いのではないでしょうか。特にペン字を習っている人は、
「安定して書けるボールペンがいい!」
「筆跡が美しいので万年筆の方が好き!」
と好みが分かれるところです。
しかし、ボールペンと万年筆を書き比べたことのある人は実はまれです。多くの人は「今持っているから」という理由で手持ちの筆記具を使い続けているのではないでしょうか?
少なくとも僕もそうでした。
そこで今回は、比較されることの多いボールペンと万年筆の書き味・筆跡をこれでもか!というくらい徹底的に比較します。この記事を読めば、自分が書きたい文字はボールペン・万年筆のどっちで書けるのかが分かります。
この記事を読めば分かること
・楷書と行書でのボールペンと万年筆の書き味の違い
・書くスピードなど、さまざまな条件を変えて書いたときの書き味の違い

様々な角度から徹底的に比較していくよ!
使ったボールペンはジェットストリーム、万年筆はカクノ




比較に使うボールペンと万年筆は、出来る限り条件を合わせるように考えました。その結果使ったのは、
- ボールペン:ジェットストリーム(三菱鉛筆)0.5mm
- 万年筆:カクノ(パイロット)細字
いずれも非常に使いやすいエントリーモデルとして有名です。
字幅については、ボールペンの0.5mmと万年筆の極細字がだいたい同じ字幅です(三菱鉛筆のサイト参照)。そのため本来は極細字を選ぶべきですが手持ちでなかったため、やむなく細字を使いました。



今回の比較については極細ではなく細字を使っているので、少し万年筆の方が太くなっているよ!
「永」の字


①始筆:ボールペン・万年筆両方ともキレイ
始筆とは文字の書き始めの部分であり、文字の表情を決めるとても大事なポイントです。スッと書き始められるかがポイントです。
こちらはボールペン・万年筆の両方ともとてもキレイに書き始められており、大きな違いはありません。
②左はらい:ボールペンのはらいがなめらかで美しい
ボールペンの左はらいは先に行くほど自然に細くなって、最後スッとはらえておりとても綺麗です。
一方で万年筆の左はらいは、先端部がほんのわずかだけ太いままブツっと切れています。これは万年筆のインクの出が良いため、はらいの最後にインク溜まりができてしまうことが理由と考えられます。
③右はらい:万年筆ははらう直前の筆圧調整が簡単
右はらいはだんだんと筆圧を強くしていき、最後に筆圧を抜いてはらいます。
ボールペンの右はらいは、筆圧かける段階で線がところどころ切れてしまっています。これは筆圧が強くなることでインクが出にくくなることが原因と思われます。
ボールペンで右はらいをするときは、筆圧のかけすぎに注意しましょう。
一方万年筆の右はらいは最後までスムーズで、線の途切れなどもありません。万年筆はペン先の弾力があるため筆圧の調整が簡単にでき、インクも十分に出てかすれることもほとんどありません。



文字を細かく見ていくと、部分ごとにボールペンと万年筆それぞれの書き味の特徴が出ているね!
楷書と行書
楷書と行書はいずれも日本語の字体です。
楷書(かいしょ):漢字の基本形で、筆画がはっきりしていて読みやすい書体。
行書(ぎょうしょ):楷書よりも筆運びが速く、流れるような形で書かれるやや崩した書体。



楷書をくずしたのが行書だね!
楷書:両方ともかっちりした筆跡で読みやすい


字幅の違いでボールペンの方がやや細く見えはしますが、全体の印象はほとんど変わりません。
見た目とは違って、書くときの書き味は結構違います。
ジェットストリームはとてもサラサラかけるボールペンではありますが、それでもある程度の筆圧を必要とします。これくらいの短い文であれば問題ありませんが、ボールペンで長い文章を楷書で書くと手が疲れます。
一方、万年筆は構造的に書くのに筆圧を必要としないため、ボールペンほどは手は疲れません。トメの他、ハネや右はらいの直前など、ポイントポイントでしっかり筆圧をかけるだけでOKです。
行書:万年筆の柔らかさが毛筆に似ていて美しい


行書であっても、ボールペンと万年筆いずれも非常にきれいに書けます。
個人的には右の万年筆で書いた線の方が柔らかく、行書の雰囲気に合っている印象を受けます。万年筆は筆記具の中で最も毛筆に近いと言われていますので、ペン先のしなりを活かした柔らかい字を書けるのが万年筆の長所だと思います。
書くスピード





今度は書くスピードを変えて、ボールペンと万年筆でそれぞれ書いてみたよ!
速く書く:万年筆のインクフローが優秀
速く書いたときに気になるのがインクのかすれです。サインなど、スピードが大事な場面でもしっかりとかすれることなく書けてほしいですよね。
その点において万年筆はとても優秀です。全くかすれることはありませんでした。
ボールペンもほとんどかすれることはありませんでしたが、最初の書き始めの部分でわずかながら線が途切れてしまいました。


遅く書く:ボールペン・万年筆両方とも問題なし!
字を丁寧に書いたりペン字で慣れていない字を練習する時など、遅く書くことは意外と多いです。
懸念していたのはインクの滲みです。しかし、結論としてはボールペンと万年筆のいずれにも気になるほどの滲みは見られませんでした。
しかし、紙質およびインクの種類によっては滲みが発生するので注意が必要です。
今回は滲みにくいコピー用紙を使いましたが、滲みやすい半紙のような紙を使った場合は滲みが発生しやすくなります。またインクについても、水性インクのボールペン、染料インクの万年筆は滲みやすいという特徴があります。



にじみが気になるときは、ボールペンであれば油性インクかゲルインク、万年筆であれば顔料インクを使おう!!
書く太さ





次は、筆圧を変えて書く太さを変えてみたよ!
太く書く:万年筆がかなり太く書ける
今回はボールペンよりも万年筆の方がやや字幅が太いので単純比較はできませんが、それでも筆圧をかけることで万年筆はかなり太く書くことができます。
ただし、万年筆は筆圧はかけすぎないように注意が必要です。ペン先は非常に繊細なので強く押し付けるとペン先が変形し、最悪の場合破損してしまいます。
一方、ボールペンも筆圧をかけることで太くはなりますがその変化は万年筆よりも小さいです。また、ボールペンは筆圧をかけすぎるとペン先のボールが回転しなくなってしまい、線が途切れます。
細く書く:ボールペン・万年筆ともに筆圧を弱めると線が安定しづらい
ボールペン・万年筆に共通することですが、筆圧を弱めると書くときの線がブレてしまいます。また、ボールペンは筆圧をかけることでインクが紙に付着するので、ボールペンは筆圧を弱めすぎると線がかすれます。
ちなみに、万年筆は普通の持ち方からペン先を180度ひっくり返して書くことで、非常に細い線を書くこともできます。



ボールペン・万年筆ともに、あまり強く/弱く書きすぎるのはよくないね。
書く大きさ





最後に文字の大きさを変えて書いてみたよ!
大きく書く:万年筆インクの発色がよく大きく書いても読みやすい
線の太さに対して文字を大きく書くとどうしてもスカスカの印象を受けてしまいがちです。
しかし万年筆の一般的なインクは染料インクで紙に染み込み、とても発色がよく大きく書いてもしっかり読めます。また万年筆は筆圧をかけるとある程度太くも書けるので、大きな字を書くのにも向いています。
一方ボールペンの一般的なインクは油性インクで、紙に染み込ません。そのため万年筆ほど色の発色がよくなく、細く薄い印象を受けてしまいがちです。
小さく書く:ボールペンがにじみにくく書きやすい
手帳のメモや日記など、小さな字を書く場面は思った以上に多いです。
ボールペンはそんな細かい字を書くのに最適です。油性インクであればにじみもほとんどなく、細かい字も非常に書きやすいです。一方で万年筆はボールペンに比べると滲みが発生しやすく、小さい字を書くと文字がつぶれてしまいがちです。
まとめ:ペンの特性を踏まえて、自分に最適な筆記具を使おう!





今回の比較結果を表にまとめたよ!
ボールペン | 万年筆 | |
---|---|---|
始筆 | きれい | きれい |
左はらい | スッときれい | 少しインク溜まり |
右はらい | 線途切れがち | きれい |
楷書 | きれい | きれい |
行書 | 少し固い印象 | 柔らかい印象 |
速く書く | 一部かすれる | 問題なし |
遅く書く | 問題なし | 少しにじむ |
太く書く | 一部線途切れる | 太く書ける |
細く書く | 線がぶれる | 線がぶれる |
大きく書く | スカスカに見えがち | 発色よい |
小さく書く | 問題なし | にじむ |
どんな条件で字を書くかによってボールペン・万年筆のどちらを選ぶと良いかも変わってきます。
例えば、ペン字を習うのであれば楷書だけではなく行書も美しくかける万年筆の方がオススメです。
ペンの特性と自分がどんな場面でそのペンを使うかを踏まえ、ボールペンと万年筆のどちらがベターかを考えられるといいですね。



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